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2021.08.27|インタビュー
Webサイトリニューアル成功の鍵は、ステークホルダーとの共通理解
Webサイトはステークホルダーがファーストコンタクトを取る場となることが多く、その後も社員に代わって来訪者との接点を持ち続ける重要な役割を担います。そのWebサイトのリニューアルプロジェクトとなると、社内外で多くの関係者、予算が発生することから一大プロジェクトとなります。
Webサイトの運用を専業でされていない方にとって、リニューアルプロジェクトを自分たちだけで完遂させることはとても大変なことではないでしょうか。
今回は弊社がRFP作成支援を行った日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)様に、Webサイトのリニューアルを検討したきっかけから、メンバーを巻き込んでサイトの方針をまとめあげるまでのお話を聞かせていただきました。
※本記事の使用写真は、撮影時のみマスクを外しています。
写真左:河野 健太(こうの けんた)様
ブランド戦略本部マーケティング部ブランドコミュニケーショングループ
写真右:山田 浩史(やまだ ひろし)様
ブランド戦略本部マーケティング部ブランドコミュニケーショングループグループマネージャー
金澤 葵(かなざわ あおい)
プロジェクトマネージャー
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社法人サービス事業部ソリューションサービス部Webインテグレーション1課
数千ページのWebサイトリニューアルプロジェクトの担当に
― 今回、Webサイトリニューアルを検討したきっかけを教えてください。
山田様:
私たちマーケティング部は、日本生協連で開発した商品の認知向上とブランド価値向上をミッションとしています。ブランドコミュニケーショングループでは、WebサイトやSNSの運営、動画制作など、デジタル全般を担当しており、昨年の新型コロナウィルスの影響から、デジタル施策は特に活発化してきました。
ただ、デジタル担当は他社のように数十名いるような体制ではなく、現状2名という状況です。
そんな中、現状のWebサイトは、構成が複雑で欲しい情報を入手する際、階層が深すぎて時間がかかり探しづらいとの声が内外でありました。組合員から寄せられた声を商品の開発・改善につなげることもマーケティング部の重要な役割の一つです。
現行のWebサイトではコープ商品の認知向上やブランド価値を十分に伝えられていないのではないか。そこで、Webサイトリニューアルのプロジェクトが立ち上がりました。
河野様:
実際に内部から「この情報を探しているが、どこに載っているのかわからない」との問い合わせも複数あり、私自身も回答時に迷うサイトの作りとなっていました。
Google Analyticsにて現状分析した際は離脱率が高く、特にブランドページが見られていない傾向があり、訴求があまりできていないのではという疑念がありました。そこで、日本生協連のブランド価値の訴求強化と情報設計をメインの課題にし、サイトリニューアルを検討しました。
自身でサイトの現状分析を開始
しかし、課題発見につまずきパートナー探しへ
― 外部のパートナーへ依頼した経緯を教えてください。
河野様:
数千ページあるサイトの現状分析を、私だけで行うには大変な作業でした。さらに、分析で見えてきた課題がすぐに改善が必要な重要課題なのか、自分だけが感じている課題なのか判断がつきません。
そもそも、このサイトを立ち上げた目的が不明瞭なだけでなく、誰がステークホルダーなのか、ターゲットも不明でした。
サイトリニューアルの目的を明確にするにも、ターゲットを設定したくても、決めるための材料がない状況でした。
そこで、これらの課題発見から目的やターゲットの設定を整理するためには、具体的なRFP(Request for Proposal:提案依頼書)の作成が必要だと考え、Webサイト構築の専門性の高いパートナーを探すことにしました。
関係者の理解を得るには、説得力ある調査が必要
― RFPの作成で、パートナーに期待していたことはありますか?
河野様:
サイトリニューアルプロジェクトを上層部へ提案する際に、プロフェッショナルな視点で要件をまとめていただけると、納得感と共通の課題意識を持って進められると思ったのも外部へ依頼をした理由の一つでした。
― 数あるパートナーのうち、弊社を選定いただいた決め手をお聞かせください。
山田様:
各社からのご提案は、真摯に対応いただけて長くお付き合いできるかという視点で聞いていました。
内部でサイト運営のサポートを受ける環境があまりない中、私たちが抱えている課題を理解し、サイトリニューアル後のサイト運営も踏まえて寄り添っていただけそうか。こうした選定基準の中、ソニーネットワークコミュニケーションズさんは、専門用語も咀嚼し我々と同じ目線に立ってお話していただきました。
提案時に、「何でもできます」と話を広げすぎて、プロジェクトが進むと「それはできません、費用に含まれません」と言われてしまうことがありますが、ソニーネットワークコミュニケーションズさんからは、できること、できないことを最初にはっきりと言っていただいたことでプロジェクト進行中もお互いの認識の違いはほとんどありませんでした。
河野様:
ソニーネットワークコミュニケーションズさんは、提案の段階から営業だけでなく制作側のメンバーの方も同席し、どのようにRFPを作成していくか流れの説明だけでなく、私たちの意見に対して違うことは違うとはっきり言っていただいたことで、安心してお任せできると思いお願いしました。
また、今回のリニューアルではCMSの実装がマストの要件でした。
内部でのサイト運用時に数千ページのボリュームを手作業で書き換えるのは現実的ではありませんし、他部署から当時利用していたCMSについて「使いづらい」「機能を追加したい」などの声もありました。そこで、CMSをよく知り、大規模サイトの構築から実装までできる点も選定基準の一つにしたのです。
サイトリニューアルはまず、現状把握とクライアントの理解から
金澤:
Webサイトリニューアルの検討において、お客様からは度々「前回のサイトリニューアルから時間が経過しているため、デザインを刷新したい」「運用工数を最適化したい」との声をいただくことがよくあります。
Webサイトリニューアルは、ビジネスゴールを達成するための一つの手段。
RFPは、お客様のビジネスゴールからWebサイトのゴールを設定し、社内外で共通理解を得るために重要なツールとなります。Webサイトのゴールと現状のギャップを知るために、まずは定量調査と定性調査による現状分析から入ります。
定量調査ではGoogle Analyticsなどのトラフィック分析ツールを用いたWebサイトの傾向、競合分析でのユーザー層探索から課題を洗い出し、業界知識やお客様が社内外で取られているコミュニケーションの方法、インフラの仕様など、定性調査でお客様より情報をご提供いただきます。
関係者ヒアリングで運営体制の実情を知る
― 定性調査によって日本生協連様側で得られたことはございますか?
河野様:
今回の定性調査では5部署にヒアリングしました。
例えば、とある部署ではページの更新作業に年間400時間かかっていることがヒアリングによって初めて判明し、サイトの重要課題の一つとして設定しました。
ヒアリングした内容は、ソニーネットワークコミュニケーションズさんがRFPに盛り込むべきかシステムを改修すべきか、運用でカバーできるのか判断してくださり、大変助かりました。社内のメンバーだけでなく、第三者に入っていただいたことで現場の声を吸い上げやすかったです。
このヒアリングによって、他部署メンバーもプロジェクトへ主体的に参加してくれ、中には「インタビューで言い忘れたので、もう一度ヒアリングしてほしい」とリクエストする部署もありました。
山田様:
RFP作成ではサイトの方向性を定めるために、関係部署を巻き込んで意見を聞かなければなりません。しかし、私たちだけでは何を聞けばサイトリニューアルに向けた有益な情報が得られるか、適切な質問が浮かびませんでした。
ソニーネットワークコミュニケーションズさんには、一緒に質問を考えていただいただけでなく、ヒアリングにも同席してサポートいただいたので、有難かったです。
定量調査と定性調査から課題を抽出、RFPを作成
― RFP作成までのステップを教えてください。
金澤:
まずは、数値データとサマリーしたヒアリングの内容から課題を整理していきます。大小様々な課題が見えてきますが、中期戦略をもとにプロジェクト内で優先順位を決め、対処すべき課題を選別しRFPへ落とし込みます。
RFPでは、リニューアルに必要な項目だけでなく、日本生協連様の中期戦略も記載しました。制作メンバーなど、プロジェクトメンバー以外のメンバーでも施策の意図を理解し判断できるようにしたためです。さらに、各所からの声を吸い上げ内容に盛り込んでいるため、メンバーがプロジェクトに意識を向けやすく共通理解を得る効果もあります。
今回のような大規模サイトプロジェクトでは、CMS・フォーム・システム・サーバー・クラウドサービスの連携など、担当部署でしか把握していないシステムが存在する場合が多く、プロジェクトリーダーが全てを理解しないまま外部に委託してしまうと、抜け漏れが発生しトラブルを招くこともありますので、ヒアリングの際に注意が必要です。
ヒアリングした内容をRFPにまとめる作業は、ヒアリングする人数に応じて回答数が変化するので時間がかかりますが、最も我々が支援する意義があるフェーズとなります。
RFP作成がプロジェクトの参加者意識を高めるきっかけに
RFPの作成をアウトソースする価値は、業務リソースや専門的なノウハウの補填だけではありません。
今回の事例で、RFP作成をきっかけに課題や不満を関係者へヒアリングすることで、内部コミュニケーションの機会、方向性を確認する機会、新たな課題を発見する機会の創出だけでなく、ステークホルダーのプロジェクトへの参加者意識の醸成に成功しました。
プロジェクトメンバーが主体的に考えるようになることで、プロジェクトの成功確率はさらに上がるのではないでしょうか。