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2022.02.03|デザイン
カスタマージャーニーマップの作成につまずいている皆様へ
現役UXリサーチャーが解決します!【後編】
カスタマージャーニーマップを
作成するにあたって
前編では、カスタマージャーニーマップの作成時につまずきがちなポイントについてリサーチャーが回答しました。 カスタマージャーニーマップ作成後の疑問点をメインに解説していきます。
前編に続き、現役リサーチャーが解説!
Q5.カスタマージャーニーマップの見直しをかけるおすすめのタイミングはありますか?
定期的に見直しするべきでしょうか?
A5.ペルソナとカスタマージャーニーマップは、一度作ったらそれで良いというものではありませんので、タイミングをみて見直しをしましょう。
商品カテゴリーのライフサイクルによって、あるいは社会情勢によって設定すべきペルソナは変わってくるので、一概にどのタイミングが良いとは言えませんが、少なくとも「もうこのペルソナは時代にそぐわないな/自社の顧客とは離れてきたな」「自社の製品・サービスの実態に合わなくなってきたな」と思い始めたら見直しをしてください。
自社で大きな施策変更などが行われる前に見直すのも、ひとつのきっかけだと思います。
Q6.以前作ったカスタマージャーニーマップが現在の状況にそぐわなくなってきたので見直しをかけたいと思います。
以前に時間をかけて作ったこともあり、できれば見直しに時間をかけたくないのですが、効率的にできるポイントがあれば教えていただけますか。
A6.過去に作ったものをベースにして、変化点を反映させることはできるかと思います。一度作っているのであれば、前ほど時間はかからないのではないでしょうか。
ただし、部分的に調査をしてそこだけ変えようというやり方はお勧めできません。カスタマージャーニーはお客様の体験の連鎖です。一連のフローを確認し直す作業は必要になると思います。
より良いUXを生み出すためのHCD(人間中心設計)サイクル
ユーザー(顧客)の要求は変化するので、定期的な見直しが必要です
より良いUXを生み出すためのHCD(人間中心設計)サイクル
ユーザー(顧客)の要求は変化するので、定期的な見直しが必要です
Q7.カスタマージャーニーマップの重要性を社内に理解してもらうには、何から手を付ければよいでしょうか。
最終的には上司に説明をし、実行のための決裁をもらいたいと思っています。
A7.具体的な課題に即した活用イメージを共有することで、社内のメンバーに自分事として捉えてもらうことができると思います。
例えば「顧客がサービスを購入するまでの大まかな流れは分かっていても、どのような刺激を受けて、何を考えてこのような行動を取っているのか不明」という課題があったとしましょう。
その場合、簡易的にカスタマージャーニーマップを作成し、不明点をブランクにして「この部分を明確にして、顧客がスムーズに購入に至れるように先回りをしよう」などというイメージのしやすい提案をしてみてはどうでしょうか。
他の人からも「それだったらこれも知りたい」という新たな課題も出てくるかもしれません。
こうして課題を共有していくと、カスタマージャーニーマップの活用に積極的な人が増え、上司への説得もしやすくなるのではないでしょうか。
Q8.自部署でカスタマージャーニーマップを作ったが社内に浸透せず、ジャーニーを無視した施策や、そもそも別のジャーニーを作ってしまう場合もあります。
社内に浸透させるには何をするべきでしょうか?
A8.作成の段階で、複数部署の方を巻き込んでおくということが一番の解決策だと考えます。そうすることで、各部署にとって使い勝手のよいものになります。何より、作成に参画したこと自体が活用のモチベーションになります。
既にできあがっているものを浸透させることは難しいですが、完成した経緯や具体的なヒアリング内容、エピソードなどを丁寧に各部署に説明することで、生き生きとしたお客様像をイメージしてもらいやすくなります。顧客のイメージがつかめると、カスタマージャーニーマップも受け入れやすくなると思います。
もう一つ重要な点としては、作成の過程に決裁権のある人を入れておくということがあります。
細かい作成手順に参加してもらう必要はありませんが、ワークショップに部分的にオブザーバーとして参加してもらい、作成後の講評をしてもらうなどの関与でよいと思います。これは決裁権を持つ人にも自分事にしてもらうための対策です。そうすることで、その後の施策案が社内で通りやすくなるという効果があります。
Q9.カスタマージャーニーマップ作成にあたり、自社の顧客(ペルソナ)は自社が一番知っているかと思いますが、調査会社に依頼することで得られるメリットを教えてください。
A9.自社の顧客のことを本当に理解していて、その顧客だけを意識していればよいということであれば、調査会社に依頼する必要はありません。ただ、その顧客像は社内で認識合わせができているでしょうか。
各部署・各人で、イメージする顧客が違っていると、シームレスな施策案が打ち出しにくくなってしまいます。そういう意味でも、共通ペルソナとして拠り所を持っておくことは重要です。
その際に、必要であれば調査会社の手を借りるとよいでしょう。また、外部機関の目を通すことによって、社内では気付かなかった顧客の行動や考えが見えてくるということも期待できます。
自社顧客以外に、今後顧客になりうる潜在層や、競合他社の顧客像についてはどうでしょうか。顧客層を広げるという課題の場合には、新たなペルソナ作成は必要になるでしょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップの作成は、ペルソナに則り顧客視点で徹底的に施策を検討していくため、UXの向上が期待できます。
さらに、開発や企画、営業部門や年次、役職の違う幅広いメンバーを巻き込むと、多角的なアイデアが創出されるだけでなく、社内のコミュニケーション活性化といった副次的な効果もあります。
これから本格的にUX改善に注力したい方、もしくは既にカスタマージャーニーを作成しているがアイデアが凝り固まってしまったり、議論がスムーズに進まなかったりする場合は、第三者視点として外部の企業にサポートを依頼するのも一つの手段です。
リサーチャー紹介
株式会社レアソン
リサーチ&コンサルティンググループ
シニア・アナリスト
緒方 かほる氏
20年以上に渡ってソニーグループ内外のリサーチ業務に携わる。エレクトロニクス製品やネットワークサービスなど多様なカテゴリーの調査を実施。定量・定性調査の両方で企画・実査・分析を行う。定性調査では、自身でインタビューモデレーションを担当。