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2025.07.31|インタビュー

GAAD JAPAN 2025 登壇者インタビュー
「誰もが“感動”を分かち合える世界へ」ソニーグループが取り組む、アクセシビリティ

毎年5月の第3木曜日は、世界各地でデジタル分野(Web、ソフトウェア、モバイルなど)の「アクセシビリティ」を啓発するGAAD(Global Accessibility Awareness Day:ギャード)の日です。アクセシビリティとは、障害の有無や年齢、利用環境にかかわらず、すべての人が平等に情報にアクセスできるようにする取り組みを指します。例えばWebサイトを制作する際に、視覚障害のある方が読み上げ機能を使って閲覧できるよう設計することもその一つです。

世界的な啓発活動GAADの主旨に賛同し、日本国内で2025年5月15日に開催されたイベント「GAAD Japan 2025」に弊社法人サービス事業部 ウェブソリューション部 プロジェクトマネージャーの中 翔子が登壇。ソニーグループで実践しているWebアクセシビリティの取り組みについてご紹介しました。

本稿では、講演後に行ったインタビューを通じて、Webアクセシビリティへの考え方やWebサイト制作の現場が直面している課題などについて解説します。

中 翔子(なか しょうこ)
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
法人サービス事業部 ウェブソリューション部 プロジェクトマネージャー

Webアクセシビリティ向上はデジタル戦略を支える投資

― はじめに、日頃の業務内容について教えてください。

プロジェクトマネージャーとして、ソニーグループ内外問わず企業のWebサイト制作を多数ご支援しています。制作全体の進行管理を担うこともあれば、プロジェクトの初期段階で要件定義や設計を担当することもあります。その一環として、Webアクセシビリティ向上も担当領域に含まれています。

ソニーグループは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスを掲げており、誰もが自分らしく、そして感動を分かち合える世界を目指しています。この考えに基づき、Webサイトの新規制作やリニューアルの際には、公開前に監査を受けるプロセスが設けられており、Webアクセシビリティ向上もその一部に含まれます。

私はその分野での支援経験が多かったことから、今期よりソニーグループのWebサイトを統括する事務局で、Webアクセシビリティの推進活動も担うようになりました。

― アクセシビリティに取り組む企業は増えているのでしょうか。

そうですね。業界によって温度差はありますが、金融や保険業界ではアクセシビリティを必須としている企業が多く、それ以外の業界でも「対応したほうが良いか?」とご相談いただく機会が増えている印象があります。一方で、「アクセシビリティは障害者や高齢者のための“特別なもの”」と誤解されているケースも、多く見受けられます。

しかし、アクセシビリティの対象は決して限定的ではなく、“特別なもの”でもありません。健康な人でも怪我や病気で心身に不自由が生じることはありますし、例えば「公共交通機関の中で音が出せないときでも動画が見られるように字幕を付ける」や、「晴天下でスマートフォンの画面が見えにくいときでも視認できるようにコントラストを確保する」といった配慮は、誰にでも起こり得る状況で役立つものです。

自社のWebサイトにアクセスしてくれた方には、どんな環境下にいたとしても適切な情報を届けられるようにしておきたいですよね。そのための配慮は、多様性や包摂性を重視する姿勢として企業の信頼性を高めますし、機会損失を防ぐことにもつながります。したがって、Webアクセシビリティ向上はコストではなく、企業のデジタル戦略を支える投資のひとつと捉えています。

Webアクセシビリティはすべての人のためにある

― GAAD Japan 2025で、中さんが最も伝えたかったメッセージは何ですか。

「要件定義や設計の段階からWebアクセシビリティを意識するように、Webサイト制作のプロセスを見直してほしい」ということです。昨今のWebサイト制作では、ユーザビリティに配慮するのは当たり前になっていますが、Webアクセシビリティに関してはまだ十分に浸透しておらず、見過ごされるケースが少なくありません。

「Webアクセシビリティ監査を受けてから、指摘された箇所の修正をすれば良い」という発想で制作のプロセスを最後まで進めてしまうと、リリース直前に修正対応が増えて大きな負担となってしまいます。だからこそ、ユーザビリティを意識するのと同様に、初期段階からWebアクセシビリティを自然に組み込めるプロセスへと変えていく必要があると考えています。

― Webアクセシビリティの知識を身につけるべき人は、中さんのようなプロジェクトマネージャーでしょうか?

いいえ、Webサイト制作に関わるすべての方です。例えばデザイナーの場合、コントラストを確保するには背景とロゴや文字との相性などを考慮しなければならないため、色使いに大きな影響が出ます。コーダーには、ブラウザの音声読み上げ機能を使ったときにスクリーンリーダーが正しい順番でコンテンツを読み上げられるよう、適切なマークアップやコーディングの技術が求められます。

このようなWebアクセシビリティの知識を制作業務に取り入れるには一定の学習が必要ですが、Webサイト制作に関わっている方なら、噛み砕いた説明があれば理解できることも多く、一度取り組めば、意外とハードルは高くないはずです。

私自身もまだまだ勉強中です。Webアクセシビリティの推進活動をされている方々が公開しているコンテンツや、デジタル庁が公開している『ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック』などを活用しながら、知識を身につけてきました。

GAAD Japan 2025への登壇を通じて、私も皆様の学びをお手伝いできるよう、もっと発信にも力を入れていきたいと感じるようになりました。今後の取り組みとしては、8月26日に社外向けセミナーを実施予定です。Webサイト制作に携わる皆様に、ぜひ広くご参加いただければと思います。

2025年8月26日オンライン開催セミナー

ソニーグループの高い水準でWebアクセシビリティ向上を実現

― ソニーグループでのWebアクセシビリティ向上は、どのように行われているのですか。

ソニーグループでは現在の適合基準を「WCAG(ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)2.2」という国際的なガイドラインの「レベルAA」に設定し、主要ページについては2026年4月を完了目標として、順次グループ内のWebサイトの改善を進めています。

しかし、このガイドラインはとても難解で、細部まで正確に理解して対応できる人材は限られているのが現状です。実際、グループ内のサイトオーナーから「リリース前に監査を受けたところ、WCAG2.2の基準を満たしていない点がいくつも見つかったが、どこをどう修正すれば良いのかわからない」「修正支援をしてほしい」といった声が多数寄せられています。そこで、私たちの出番です。Webアクセシビリティの知識を持ったメンバーが、現場に寄り添いながら、具体的かつ現実的な改善案を提示するようにしています。

― 今後は、ソニーグループ外のお客様に向けたWebアクセシビリティを含むWeb制作コンサルティングにも力を入れていくそうですね。

はい。私たちが25年以上にわたり培ってきたソニーグループでのWebサイト制作の経験を活かして、グループ外のお客様に向けても、要件定義からしっかりとWebアクセシビリティ向上を組み込んだ高品質なWebサイト制作をご支援していきます。

「Webアクセシビリティの必要性は感じているが、何から始めればよいのかわからない」とお悩みの企業様にもご安心いただける体制を整えておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

GAAD Japan 2025の講演内容は、こちらの動画にてご覧いただけます

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